Master & Slave気配に、意識が戻る。
何者かが自分の衣服……諸肌脱いでいるので、下半身だ……に
触れる気配。
咄嗟に目を開ける程、未熟ではなかった。
状況判断出来ていない時は、取り敢えず死んだ振りのままの方が
生き残る確率が高い。
一秒目を開けるのが遅れたばかりに命を落としてしまう可能性も
ゼロではないだろうが、敵が身近にいれば、一度目を開けてしまえば
もう意識を失っている振りも死んだ振りも通用しないからだ。
不自然に息が乱れないように心がけながら、意識を手放す前のことを
思い出す。
……雨雲……石壁……火炎、いや、火炎すら焼き尽くす黒い炎……?
…… 天 照(アマテラス)!!!イタチ!!!
そうだ、イタチを倒すために、イタチと戦っていたんだ。
全チャクラを振り絞って麒麟を、
これで最後だと、ケリをつけてやると、放ったのに……
素戔(スサノオ)って何だよ!くそが!!!
どこにそんなチャクラ残ってやがったんだよ!
「もう隠してある技はないのか」
「あるなら出し惜しみしなくていい」
うるせえ!
くそったれが!!
悔しい事に、こっちはスッカラカンだった。
壁に背をもたせかけて立っているのが、やっとだった。
「オレの……目だ」
最強の盾と、最強の剣を従えたイタチが、ゆらりと近づいて来る。
オレの頭蓋に填っている、オレの眼球が、それでも既にもう
自分の物ではないのだと、瞬時に確信した。
持ち主が、取り返しに来る。
オレにはもう、それに抗する為に指先を動かす力すら残っていない。
3メートル、2メートル、1.5メートル。
息が掛かる程。
万華鏡写輪眼が、徐々に大きくなる。
目を逸らす事も、閉じることも出来ない。
1メートル。70センチ。
ゆっくり、イタチの腕が上がる。
幻術で目を抉り取られた時の恐怖が、寸分違わず蘇る。
いやあの時は、月読が破れると確信していたので恐怖に耐えられた。
今は、耐えられない。
トン、
血塗れの指先が、額に触れ、
オレは……死んだ。
……筈だった。
だが、生きている。
何故だ?
……そうだ。
イタチがゆっくりと倒れ込んで来て……
風圧に、濃い血の匂いと微かな髪の臭いが混ざっていた。
ずるずると、崩れていく体。
急速に瓦解していく、素戔。
あまりに都合が良い展開と朦朧とする意識。
自分が攻撃されてから、死ぬまでの刹那に見た最期の夢かと思った。
降り出した雨の粒が目に入っても、瞼を閉じる事も出来なかった。
目の縁を流れゆく液体は、親和性からして恐らく水ではないと思われた。
体液。恐らく、血。
ぼんやりと考えるともなく考え、自分が息をしていない事に気付く。
ひゅう、ひゅう、と喉を鳴らす。
息の仕方が、これで良かったのかどうか、判断できない。
思い出せない。
それでも酸素が体に行き渡ったらしく、少しだけ、力が蘇った気がした。
少なくとも、足ががくがくと震えるだけの余裕は戻った。
全身の力を集めて振り絞り、視線を動かす。
足下に、イタチが仰向けに倒れていた。
目が開いている。瞳孔も。
息を、していないように見える。
死んでいる?
……助かった……?
それからは、本当に意識が途切れている。
現在横たわっているのだから、恐らくそのまま倒れたのだろう。
どのくらいの時間が経過した?
雨は、止んでいる。
服の……中にまでは、水は染み込んでいない。
が、全体に湿気ている。
あれからすぐに雨が止んだとしても、5分という事はなさそうだ。
10分、から50分の間くらいという所か。
小一時間寝ていたすれば多少体力の回復が望めるが
その間体が冷え続けていたと思うと、どの程度動くか見当が付かない。
そして、すぐ側のこの気配。
イタチの仲間である可能性が一番高いだろう。
しかし、チャクラが感じられない。
殺意も。
……野生動物?
いやそれにしては、
ここまで状況を把握するのに、実質数秒。
その間に気配は着物の下に滑り込んで来て、腰の紐を引いた。
するりと結び目が解け、腰骨が開放されるのを感じる。
「?!」
重みが、のし掛かってくる。
勿論動物ではない。
濃厚な血の匂いが鼻を突く。
「……サスケ……」
オレの狼狽に答えるように、生温い空気と共に届けられた自分の名前。
微かな、しかし間違えようもなく聞き慣れた兄の声。
死んでいなかった、のか。
それは同時に、オレの死をも意味していた。
油断した。
完全に死んでいると思って、その隣で意識を手放してしまった。
まあ、もし生きていると分かっていたとしても他にどうしようもなかっただろうが。
瞼は、相変わらず開けない。開けられない。
恐怖に全身が震える。
もう、意識が戻ったことを隠すとかバレるとか、そんな余裕もなかった。
今のオレの力で、イタチに対抗する事は出来ない。
オレより何秒か前に目覚めた、その事実だけで十分に認識出来る。
イタチの手は、既に下着を引き下ろそうとしていた。
残された武器の所在を確認しつつ、オレの反応を待っているのだろう。
目を開ければ、それでおしまい。
そんな気がする。
こういう時の直感は外れない。
では、どう行動するのがベストなのか。
まったく分からない。
頭の中のシミュレーション。
どの分岐の先にも、遅かれ早かれ目の喪失と死が待っている。
その間にも、下半身が露出して湿った空気に晒された。
片足が持ち上げられ、濡れたイタチの脇に、抱えられる。
そのまま持ち上げられて振り回されるかと少し体を固くしたが、
その気配はなかった。
イタチにも、そんな力は残っていないのか。
とすれば、勝機とは言わないまでも、この場を逃れられる方法がある?
だがその時、思考を止めることが起こった。
イタチの手が、直接オレの肌に触ったのだ。
性器は急所だ。
痛覚や経穴が集中しているという以外にも、精神的ダメージが大きいので
攻撃ポイントとしては有用だ。
しかし防御されやすくもあるし、気分的に手を出しにくい。
鳩尾や喉が攻撃出来るものなら、そちらを優先的に襲う。
自分がそうだからと言って相手もそうだとは限らない。
留意は必要だと、重々承知していたが、でも、イタチに限って。
信じられない。
そんな事をせずとも、十分に勝てるだろう?
まだ攻撃とまでは言えないが、こちらにプレッシャーを与えるように
やわやわと睾丸を弄ぶ。
その手は、驚くほど冷たい。
死人の手だ。
ふと、これはイタチではないのではないか。
あるいは、誰かがイタチの死体を操っているのではないか、という考えが
浮かんだ。
そう思い始めると、そうとしか思えなくなった。
まず、イタチは死んでいた。恐らく。
そしてイタチはこんな、攻撃するでもなく人の体に触るような事はしない。
性器に触れる事も。
確認したい。
万が一本当にイタチだった時に備え、両手の位置を確認する。
左手はオレの足を抱え、右手は性器に触れている。
影分身を作る余裕もない筈だ。
そうっと、目を開けた。
……紅。
目の前20センチ程の所に、円い瞳が、あった。
オレの目を、凝視していた。
もう、逸らす事が出来ない。
今天照を使われたらどうするんだ?
そう思いながらも。
吸い込まれる……。
手を触れなくても、目玉が溶けだして吸い取られて行きそうだった。
イタチだった。
どうしようもなく。
……らしくない、そんな事をするのもイタチだという事だろう。
自分が知っている兄ではない。
百も承知していた筈なのに。
だから、殺さねばならないと、そのためには何でもすると、
思ってきた筈なのに。
目が、逸らせない。
その間にも、イタチの冷たい指は股の間深くに入り込む。
足が更に広げられ、指よりも太く、場違いに熱い物が押しつけられた。
どうして。
何を。
「……犯すのか、オレを」
全く想定していなかった展開。
完璧なシミュレーションなどないものだな、などとどこか冷静に考える。
「ゆるせ」
イタチも、静かだった。
幻術の中で目に指を突っ込まれた時と、同じセリフ。同じ視線。
少し切なげにも見える表情をして、そんな事を言いながら
この人の「ゆるせ」は、その実「執行する」という宣言に過ぎない。
許せる訳がないだろうなどと、反論する気力もなかった。
それがぬるりと意外と抵抗無く入ってきたのは、血でも絡んでいるのか。
どちらの物だろう。
感覚が無くて分からないが、オレかも知れない。
棒に肉を分けて入って来られるのは、刺された感覚に似ているが
このゆっくりさが堪らない。
それでも眼窩に指を入れられるよりはマシだった。
眼球を取られたら死ぬまで暗闇だが、ケツに入れられても何も減らない。
最後まで押しつけたのか、しばらくじっとしたまま
「苦しいか」
低い声が響く。
オレの目を見て、オレに向かってしゃべっているようでいて
どこか遠くに話しかけているようだった。
ふと、思った。
……兄は、こんな風に女を抱くんだな
「え、げえっ」
何気なく思いついただけなのに、その途端吐かずにいられなかった。
今まで声を出すこともなく耐えられていたのが不思議な程。
えづきを感じる間もなく、胃液がせり上がってきて口の端からダラダラと流れた。
我慢できなかった。
兄だって、食べるだろうし排泄もするだろう。
自涜もすれば、手近に女が居れば抱くこともあるだろう。
自分と同じに。
しかし、その感覚で弟を抱くというのは。
兄に、女にされた……。
そう思うと、耐えられなかった。
体の中身を全て吐き出して無くなってしまいたくなる。
えづく度に、体中に力が入って体力が奪われる。
えづく度に、腹の中の兄を、締め付けるのが分かる。
その度に兄が眉を微かに顰めるのが、また耐えられない。
今もし大蛇丸が、代わってやると言ったら代わらせたかも知れない。
あいつならこんな状況、危機でも何でもなく楽しむ事すら出来るだろう。
「サスケ」
「どう、して、こんな、」
げえげえと、吐き気で言葉が続かない。
代わりにありったけの力でイタチの胸を押したが
手首を掴まれて地面に押しつけられた。
無駄な動きだ。
上に乗られたこの状態で、体術だけで勝てる相手ではない。
気付けばもう、吐いていなかった。
吐く水分もなくなったし、体力もなくなった。
「……慣れたか」
それでも、目が逸らせない。
ずるりと抜かれて、このまま終わってくれないかと思ったが
当然のように全部抜く前にまた押しつけられる。
「苦し……」
だが終われば、もっと苦しいだろう。
目を刳り抜かれて、その後殺されるか放置される。
放置されてもこの痛手と出血と、おまけに目が見えないでは
長くは生きられない。
奇跡でも起こらない限り。
奇跡……。
あり得ないだろうが、奇跡が起こりうるとすれば。
何故かナルトの顔が浮かんだ。
あいつはいつもびっくり箱だから。
今この場に突然現れて、オレを助けてもそれほど驚かない。
だが、今の今は嫌だな。
男にやられてる所なんか絶対見られたくない。
あいつは、女を抱いたりしないんだろうな……。
身近に遊べそうな女がたくさんいるのに。
生真面目。というよりは、幼い。
何度久しぶりにあっても、アイツは成長していない。
いつまで経っても、オレを信じていると、
絶対に取り返すと、たわ言を言っている。
バカだよな……。
イタチは、動かなくなったオレを犯し続けていた。
意識が、肉体から乖離してゆく。
最後の最後まで、あきらめないなんて無理だぜナルト……。
お前なら、この状態から逆転出来るか?
「何を考えている、サスケ」
焦点が、目の前の瞳に合う。
ああ、やっぱりオレの目に似てる。
似ていると言われるのが嫌だった。
兄弟だから仕方がないが。
「……あんたのと、オレのと、どっちが大きいかな、って」
行為が始まって、初めてイタチが微笑する。
戦闘中の笑いと、何ら変わりのない単調な笑顔。
そう言えば兄弟だった頃、誉めてくれた顔とも同じだ。
笑いのバリエーションが少ない奴。
「オレの事を、考えていた顔ではなかったが」
「どうでもいいだろ。そんな事より早く終わ……」
その時。
前に。イタチの腹とオレの腹の間に、手が伸ばされた。
「おい!」
触られて、自分の物が萎えきっている訳ではない事に気付かされる。
死ぬ前に、最後に勃起する事があると、聞いたことがある。
種の保存の本能だとか。
兄……というか男相手に何が種の保存だ。
しかもオレはヤられてる方。
「やめろ!さわんな!」
また、無駄だと分かっていて言ってしまう。
イタチに、オレの言葉を聞く道理なんかないのに。
「気になるんだろう……」
はぁ?!何が?
あんたのと、オレのと?どっちが大きいか?
兄とは長いつき合いだが。
生まれて初めて冗談を言っているのを聞いた。
と思ったが、イタチの目には何の感情も宿っていなかった。
そんな状態でさすられても、怖い。
と同時に、矛盾するようだがこの状況が面白くてならなくなってきた。
だって、オレ、もうすぐ死ぬんだぜ?
体力もチャクラもほとんどゼロ。
なのに親の敵に犯されてて、それがまた実の兄。
長年殺してやりたいと思い続けている奴が、
真剣な顔で一物の大きさを比べっこしようって言ってるんだぜ?
「っくく、くくく、ははは!はーっはは、ははは、」
オレの人生、なんだったんだろうな。
命に替えてもイタチを殺す、って、どんな事にも耐えてきた。
イタチを殺せたら、もうそれ以上は何もいらないって思ってた。
そんなに親が好きだったのか、親が全てだったのかと聞かれると
正直よく分からない。
ただ、「オレを憎め」と、「強くなれ」と、イタチに言われてその通りにしてた。
結局、イタチに操られてただけの一生だったんだ。
ペットでもこんなに忠実な奴そういないぜ。
「ははははっ!ははは、はははは!」
イタチの奴隷。
側にいても、離れていても。
イタチの思うとおりに生きて、最後は犯されて目玉取られて捨てられる。
自虐的な思いに、笑いが止まらなくなる。
「ははっ!あははは、ははは、はぁ、はあ……あぁ……ん……」
気が付いたら、萎えてはいない程度だった物が、痛い程に張りつめていた。
と同時に、イタチが止まっていた腰を動かし始める。
変な声を上げてしまった事に、カッと血が上る。
「ああ……嫌だ、やめろよ、犯すって、こんなんじゃ、ねぇだろ」
「……」
イタチは無言で、腰と手を動かし続ける。
その内に、体の奥から滲んで来るような感覚に目が熱くなった。
嫌だ。
感じたくないのに、こみ上げて来る。
感じれば感じる程、目が濡れて来る。
潤んだ目を、イタチに見られたくないが、
涙が溢れるのが怖くて、瞼を閉じることも出来ない。
どうして、最後にこんな屈辱を与えるんだ。
オレはよく言うこと聞くいい弟で、いいペットだっただろ?
なあ、兄さん。
不意に、口に曲げた指が突っ込まれた。
発作的に舌を噛もうとした、瞬間だった。
口内に広がる、血の味と生臭さ。
たった今まで、オレの物を握っていた指だ。
こういう勘の良さと先回り、そして無神経さが、
昔は好きだった。
オールマイティに無難だった兄が、偶に見せる鋭すぎる切れ味。
涙が、目の端から零れていた。
絡みつき刺激する指がなくなっても、オレは萎えなかった。
頭が、ぼんやりする。
さっきまで、何かを考えていた気がする。
最後の最後まで、あきらめない、って、誰のセリフだった?
涙が流れ続ける。
ただ内側から突き上げられる、快感に、
イタチが腰を引く度、そのまま抜かれてしまったらどうしよう、とか。
そんな事しか考えられない。
イタチがオレの口から指を抜いて、両手で腰を抱えた。
死ぬ気だった?オレ?
冗談じゃない。
どうせすぐに死ねるのに、この快感を手放したくなんかない。
奴隷だ。
いつの間にか、性の奴隷。
死ぬことも、兄に抱かれている事も怖くない。
ただ、半端で止められる事が怖くてならなかった。
最後までイかせてくれ。
お願いだから。
目でも命でもくれてやるから。
「イかせてくれ……。兄さん」
両腕をイタチの首に回すと、あっさりと顔が近づいてきた。
ちょっとは警戒しねえのかよ。
さっきまで殺し合ってたのに。
それとも、今のオレの状態なんてお見通しか。
「ああ……」
低い声が、熱い息が、耳に吹き込まれてそれだけでイきそうになる。
腰が打ち付けられ、オレの中でイタチが熱くなり、硬さを増す。
「あ、ダメ、」
何がダメだ、オレ。
ダメなんかじゃねえよ。女みたいな事言ってんじゃねーよ。
少しでも、早くイきたくて。
それでいて、その時が来るのを引き延ばしたくて。
押し寄せる快感の波に耐えようと、歯を食いしばったけれど、無理だった。
抗って抗って、空高く突き上げられるように、飲み込まれた。
放ってからも揺さぶられ、涙が流れた。
下でも押し出されるように、精液がダラダラと流れ続ける。
流水に浮かぶようにただ身を任せていると、
やがて腹の上に熱いモノがぶちまけられた。
オレは何も、思わなかった。
自分が達した事にただ満足していて、腹の中に出されても外に出されても
どちらでも関係なかった。
この後オレは目を取られ、命を落とすだろう。
願わくば、この満たされた気持ちが持続している間にケリを付けて欲しい。
下らない人生でも、最後に気持ちよく逝けたら勝ち。
そうとでも思わないと、やっていられない。
「ごほっ、ごほ、」
振り向くと、辛うじて身繕いを終えたイタチが咳き込んでいた。
その口元に当てた指の間からは、ぼとぼとと黒みを帯びた血が落ちている。
そう言えば、戦闘中から何故か何度も喀血していた。
その時は自分が与えたダメージのせいかと思っていたが
よく考えると違う。
内蔵を痛める程の攻撃は出来ていない。
つまり自分は……コンディション最悪のイタチと、戦っていたのか。
そしてほぼ互角で倒れ、
更にその後何の抵抗も出来ずに犯されたのか……。
追いついた追い越したと、思っていた力量の差に愕然とする。
イタチがどこかで既に傷を負っていたというのは、知らなかったとは言え
運が良かったのだ。
いや、知っていればもっと弱点を狙った攻撃が出来たか……。
今のイタチはどうだ?
オレ以上に、疲れている?
それはそうだ、受け身のオレと違って動き続けていたからな。
それに、いつの間にか止血してあった足からも、再び血が滴っている。
……今なら、殺れる?
さっきまで死ぬのは自分だと思っていた。
何とか逃げる方法はないかと考えていた。
この隙に、逃げるべきか?
それとも。
これは千載一遇の、チャンスなのか?
「……来ないのか。サスケ」
「……」
体の力が、抜けた。
無理だ、と悟ったからだ。
隙を見せて、オレを試したんだろう。
「アンタを殺そうとしたら、どうした」
「目を貰うだけだ」
「なら、やめたら?」
「……お前は本当に、強くなった。
不覚にも、お互い万全の時にまた戦いたいと思った」
「……そうか」
イタチが好調の時に出会ったら、勝てる気がしない。
今のところ。
だが、また修練を積んで、次は必ず、という思いもある。
正々堂々と。
どこかのバカの、バカがうつったのかも知れない。
……何故、そんな突拍子もない事を思ったのか分からない。
命の危険が去ったと思うと、気が抜けすぎたのか。
ふと、イタチをからかってみたくなった。
「なら、……もう一度抱いて欲しい、と言ったら?」
「……」
イタチは、無言で眉を上げてオレを凝視した。
これほど驚いた顔を見たのは初めてかも知れない。
十分に満足な反応だ。
「冗談だ」
意図的に唇を歪めて告げると、イタチは無表情に戻って背を向けた。
何を考えているのか、相変わらず読めない。
だが背を向けられても、攻撃は出来なかった。
背を向けたまま、独り言のように平坦な声がする。
「……それまで、死ぬなよ。サスケ」
「え?」
軽く何度か跳躍し、遠ざかって行く。
最後に「冗談だ」と聞こえたような気もするが、
それは自分の願望だったのかも知れない。
オレは再び瞼を閉じた。
自分の眼球が、自分の物である事を確認するために。
-了-
※知らなすぎてごめんなさい。
イタチ兄ちゃんがなんでサスケくんの目が欲しいのか、とか。
写輪眼状態の時に抜かないといけないのか?とか。
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